生まれて初めて胃カメラを飲んだ

会社の定期健康診断を受けてきた。
酒を飲むのは大好きだけど、今回、生まれて初めて胃カメラを飲むことにした。怖い病気なんかを恐れてのことでね、ええ。
いけませんか。

 

他人様はバリウムよりも胃カメラが良いよ、などと簡単げにのたまうので漠然とそんなものかな、という考えもあったのだが、やはり自分の体内をファイバースコープがのたくり回るのを想像するだけで、恐怖心は募るというもの。

 

さて、いよいよ自分の番が来た。胃カメラを飲む前に雰囲気にのまれてしまったがな、あんた。最初に喉に麻酔薬を注入する。
看護師が4分ほどそのままで飲み込まないで、と言うのだがその長いこと。そして4分後、溜まった唾液と共に吐き出す。他人様の話ではこんな描写なかったぞ、と思うのだが。さらに液体を注入されたうえ、飲み込むなというお達し。「器材の用意ができたらお呼びします。」
最初から用意しておけよ、と。
マウスをテープで固定されたり、横向きに寝ころべ、腰を若干後ろへ引け、腕はこっち側などとあれこれ指図される。

顔ははっきりと見なかったが、小太りの男性の医者が俺の口にファイバーを突っ込んでくる。


「ハイ、息をしないでね。気道が食道を邪魔しますからね」

「はいはい、息をしない」

「ああ、舌を押し上げない」

「ハイ。息をしないでね」
と、小うるさく指図する。

俺は数十秒間も真面目に息をせず我慢していた。
が、当然限界が来た。息をするよな。

 

「ハイ!息をしないで!だめだめ!」
と、何故か説教口調。

息をせんかったら、フツーに死ぬやん。

 

「はい、肩とお腹の力を抜いて」

「ハイ、息をしないで!」と、また説教口調。

俺は息も出来ず、喉も違和感とんでもなくて。
く、苦しい…。

 

するとそのあと。

「…と、言っても無理だからね、はい、ゆるーく、軽ーい感じで息をして」

 

「最初から言っておけ!この野郎!」
ここで俺の堪忍袋の緒は切れてしまった。
すぐにファイバーを口から引き抜き、その小太りの医者のみぞおちにしたたかに右足で膝蹴りを見舞った。そしてあっけに取られる看護師たちを押しのけて、診察室のドアを蹴破り、制止する警備員を振り切り、全速力で病院を後にしたのだった。

…と、そんなことを妄想しながら、涙とよだれを垂れ流しながら俺は無残に横たわっていただけだけども。

「ハイ、十二指腸に良性のポリープ1ミリくらい2個」
「問題ありませんね。はい、ピロリ菌もなさそうですね」
「食道も写真撮っておきますね」

 

先生、先ほどは妄想とはいえ変なことを頭がよぎってしまい、スマンかった。でも、次の定期健康診断はやっぱりバリウムにしようかな。