「三菱自動車 燃費不正」会社側の責に帰する休業のツケを払わせられる労働者

 

三菱自の下請け、自宅待機の社員も 燃費偽装の影響拡大:朝日新聞デジタル

 水島製作所では2日、大型連休とあって生産ラインが全体的に止まり、人の出入りはまばらだった。大型連休が明けても軽の生産は当面できないため、担当していた約1300人が自宅待機を命じられている。

 賃金削減と補償については会社と労働組合が交渉を始めているが、ある男性社員(23)は「賃金のことは情報が入ってこない。なるようにしかならないですね」と漏らす。


三菱自動車の燃費データ不正問題で岡山の水島工場が稼働停止になっていて、会社側から従業員に対して賃金カットの要請が労組側に提示される方向だそうだ。当然こういった事態は地域経済にも暗い影を落とす訳で、いかに「会社ぐるみだ」と指弾されても、実際の不正を働いたわけでもなく、それこそ毎日毎日数分単位で流れてくるライン上の車に、数々の部品を自らの肉体を駆使し取り付けたり、或いはロボット使ってオペレーションしている労働者にしわ寄せが行くのには憤りを感じる。そこへ、親会社でもある三菱重工の相談役の御仁が身内をかばうだけの保身にまみれた発言を週刊誌紙上でおこない、火に油の状態となっている。

 

lite-ra.com

(抜粋引用)

冒頭の「公表燃費性能はコマーシャル」発言だけではない。「買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ。商売する人は別だけれど、自動車に乗る人はそんなにガソリンは気にしてない」「実際に(対象車種に)乗っとる人は、そんなに騒いでないと思うんだけどね」「(従業員は)罪悪感は全くなく“まあ良さげにしとけ”ということでやったに違いない」「僕が社長だったらね、“ああ、これは愛社精神の指導が間違ったんだな”と社内的には善意なんだろう、と」など、インタビューで暴言を連発している。

 

自動車に乗る人はそんなにガソリンは気にしてない

身内を擁護するつもりかなにか知らないが、自分たちに向けられている厳しい視線にも全く無頓着ではないのだろうか。リッターあたり、数円の違いでセルフのガソリンスタンドを選んでいる人間にとって、さすが大企業の偉いさんはお金持だけに言うことが違うな、と感心しきり。そしてなにより、新車の購入時に燃費に応じて自動車重量税地方税自動車取得税が軽減されるエコカー減税などにも絡んでくるとすれば、本来支払うべき税金の補てんなどを求められるとすれば企業の存続にもかかわってくる。


それを、言うに事欠いて『まあ、よさげにしとけ』なんていう能天気極まりないグループ企業トップの態度を見るにつけ従業員は憤懣やるかたないだろうな、と門外漢の私にも想像に難くない。

 

三菱自動車“不正”車生産の従業員 賃金カットへ

不正をしたのは生産ラインで働く従業員ではない。そしてこれを了とするのが御用組合たる所以でしょ。/まあ、休業補償は6割を支払う義務があるが、今の段階で従業員の副業も認めたのか?それを是認するのは暴論。

2016/05/02 18:29

 

 会社側原因の操業停止で賃金カットの憂き目にあう方はたまったもんじゃない。この報道が先行したのかもしれないが、ニュースを受けとる側としては一方的な印象を抱いてしまう。まず最初に経営陣が自らの報酬カット、管理職などの減給などを発表し、資産の売却等、手を尽くしたあと万やむを得なく工場の生産ライン従事者の賃金カットを発表するとすれば、ここまで批判は集中しなかったかもしれないと思う。休業補償は労基法で、休業が使用者の責に帰する場合は6割以上の賃金の保証をしなければいけないとあるが、それを労組がどこまで粘り強く交渉できるかが問題だと思う。

 

 はてなのブックマークコメント(ブコメ)でも、おおむね労働者に同情的なコメントが並んでいるようだ。けれども中には『自宅待機で休業補償もあるし、副業もできるのだろう』だとか、或いは『働いてないんだから当たり前じゃね?』などというコメントを「それは酷かないか?」と感じたのでブコメに追記をした。仮に2~3割も賃金が減額されると、自宅のローンを抱えている人や子どもが進学時期だったりする人などは途方に暮れているのではないか。

 

従業員の副業は一般的に会社の就業規則では禁止されている。その規定を一時的に解禁するという報道もなされていない今の段階で、それは少しどうなのかと思う。副業OKになったとしても1300名からの人のアルバイトが、そんなにすぐに、都合よく見つかる保証はどこにもない。もっと言えば、生産ラインでインパクトを回してて、例えば飲食店などの客商売に向いている人は、そんなに多くはないだろう。

 

ネットではこのほか、雇用を守るための措置であり仕方がない、などというまとめサイトもあった。

togetter.com

 

しょせん他人ごとだから「雇用を守るため」などと、何故だか経営者然として高い目線で「テメエ、何者だ」みたいな人も出てくる。なに言ってんだかと言うしかない。災害や大きな事故での休業と違い、意図した不正が原因のこの休業は、いつまでの自宅待機なのか、まったく先が見通せない。そして、その先には従業員のリストラや解雇につながっていくのは火を見るより明らかだろう。かつて、同じく三菱自動車リコール隠し問題で揺れに揺れた2000年前後、名古屋の大江工場が2001年には閉鎖になっている。(それを思うと、企業として全く学習していない)
それでも偉そうに「自宅待機は雇用を守るためだ」などと言えるのだろうか。

 

私は2015年3月のはてなブログ

ネットで読んだ「自動車工場の期間工」という記事に思い出すあれこれ - 諸般の事情はどうですか

という、つまらない記事を書いたのだが、実はこの三菱の水島工場に派遣労働者として2年弱であったが働いた経験がある。当時は軽四のラインでミニカやパジェロミニを製造していて、たしか「商1組ライン」そして「商2組ライン」はデリカなどを製造していたと記憶している(遠い記憶で呼称は定かではない)。私はランサーやミラージュなど、乗用車の「乗1組ライン」のほうだったが、軽四の車体が流れてくるラインは速くて大変だ、と同僚が言っていたように思う。その当時のあのひとたちは、みんな辞めていないだろうなとは思うが、派遣労働者として辛い思いばかりをした、決していい思い出の職場ではなかったが、そんなシンパシーを感じてしかたがない。