会社に依存することで安心感を得る人

少し前、身内に不幸があり通夜・葬儀と3日間、親戚と葬祭式場で同室という機会があった。一日中時間を共にすることなんて滅多にないことなので、故人をしのぶ話ばかりでは間が持たない。お互いの近況なども会話の俎上に上がるのだが、驚いたのが妻の弟(義弟)の仕事ぶりだ。

 

話の前段として、その義弟の妻が「私が行ってるパート先、有給休暇がないんよ」と言うから「そりゃ、ブラック企業じゃないの」と私が言うと、驚いたような顔して「えー。だって、個人商店みたいなもんだし」と言う。株式会社ではあるが同族経営の小企業だそうだ。

 

私:いや、パートでもアルバイトでも勤務時間が一定以上ある場合は有給休暇は発生するよ。

 

義妹:えー、そうなん?でも、そんなこと会社に言えば、おれんようになるし。

 

私:なんだったら代わりに労基に告発してあげようか(笑)

 

義妹:いやいや、だったら、うちの旦那の会社なんかもっと酷いよ。毎日会社に行くんよ。

 

私:はあ、毎日?休みはどうしてんの?

 

義妹:とにかく毎日会社に出勤してるんよ。なんか、かんか言いながら。

 

義弟:いやぁ、仕事の段取りとか全部しないと心配でねえ(笑)休日は1~2時間程度ですぐ帰ってくるんやけど。店舗を見てくるだけでも安心する(笑)

 

私:それアカンやん、サービス残業やし。言っちゃ悪いけどメチャ社畜やなあ、ほんま。倒れるよ終いに、過労死レベルやんか。労基の査察が入ったら即、行政指導ものですよ。

 

 聞けば、ほとんど毎日会社に出向くそうだ。
義弟はある地方の中小スーパーの店舗の店長クラス。
スーパーなどの流通業は1年365日営業という形態が多い。人手不足というか、人件費削減ばかり追い求める企業のせいで、休日も応援に行ったりしているうちに、いつの間にかこうなってしまったそうだ。


社畜というよりも、完全なワーカホリックである。会社に行くことが常態化している完全な依存症であろう。私が何かをするという訳にもいかないし、本人もいまのところ健康だそうだ。
場所柄もあり、私もそれ以上は言及を避けた。

 

しかし、地方の中小企業ではこういった従業員の、労働者の権利に対する無知やしがらみ、忖度、忠誠心の上で社会が回っているようだ。


私は以前、派遣で働いていた時に派遣元の悪辣さに腹が据えかねて、組合を立ち上げたことがあるが、その時の周りの人々の雰囲気というか、地方の田舎社会にありがちな権利意識に疎く同調圧力が働き、周囲に流されてしまう、そういったパターンが多いと感じた。

 

なぜドイツ人は平気で長期休暇をとれるのか | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 ドイツは19世紀の産業化で、都市化がぐっと進むが、このとき「労働者」という階層ができた。それは時間を労働の単位としてみる感覚をつくる。労働者たちは周辺の村から都市へやってきたが、地縁血縁という前近代的なしがらみから離れることになり、人間の位置づけもそのものが「個人」という単位が強くなったといわれる。また、並行して「個人」という考え方を精緻化する哲学分野の「知」も政治・社会に大きく影響してきた。

 結果的に、ドイツでは「自分の人生は自分で構築する」という「自己決定」の人生観が広がったとみられる。これは同時に他者の自己決定を尊重すべきということだ。

 

情けないことに、これは地方だけの現象ではなく、ニッポン社会全体の課題でもあるようだ。

まず最初に労働者の権利を教えておくれ

bunshun.jp

 

以下、今野晴貴氏の記事の概要を引用します。

 

 今回の事態が起きたのは、JR東京駅構内の自動販売機の補充を担当する、サントリー食品インターナショナルグループの自動販売機大手「ジャパンビバレッジ東京」に勤務する社員10数名が労働組合に加盟し、「順法闘争」を行ったためだった。法律に従い休憩を1時間分取得し、残業を全く行わずに仕事を切り上げるという戦術である。

 

 ごまかされた残業代未払い

同社の問題は複数あるが、その一つが残業代の未払いだ。同社では、昨年12月まで、自動販売機の飲料を運搬・補充する外回りの業務に対して、残業代を支払っていなかった。ひどい場合は、1日4時間以上ただ働きをさせられている労働者もいた。

(中略)

 この状況を打開しようとしたのが、今回のブラック企業ユニオンによる順法闘争だったというわけだ。実は、労働組合はある面では「特別の力」を持っているのである。

働き方改革」の限界と労働組合の意義

 簡単に説明すると、労働組合に入ることで、労働者は会社と「団体交渉」と「団体行動」を行うことができる。会社は団体交渉を申し込まれると、誠実に応じる義務があり、無視すると法律違反になってしまう。また、労働組合は、街頭宣伝やストライキなどの団体行動を合法的に行うことができ、刑事上の処罰や損害賠償請求からも免責される(つまり、正当な組合活動であれば、会社に迷惑をかけても損害賠償の対象にはならない)。

(後略)

 この記事は、労組が労働者の権利を単に行使しているに過ぎないという話です。このユニオンが順法闘争することの必然は広く知られていくべきもの。
ところで今回、私がこのブログで特に言いたいことは後段の太字ボールドの部分。

 

最初は誰もが知っているであろう、こんなことをなんで書くのかな、と思った。だけどちょっと待て、果たして「誰もが知っている事なのだろうか?」と、疑問に感じた。ひょっとして、今野氏もそういう思いから、労働組合としてのイロハのイを記したのかもしれない。団結権団体行動権、団体交渉権といった、労働三権憲法28条)のことを表しているのだが、このことを知らないで被雇用労働者をしているのは、つまり大袈裟に言えば免許を保有していないのに自動車を運転するようなものではないだろうか。

 

私は、ブコメツイッターで何度も書いているのだが、中学校で労働三権労働組合法の肝である第7条や労働基準法第1章くらいは授業をやるべきだと思う。くだらんパターナリズム価値観や、国を愛する心なんてものを押し付ける道徳なんかよりも多くの子供たちが労働者になる現実を踏まえれば、よほど役に立つと思う。

義務ばかりを声高に言う前に、労働者の権利を示して欲しいもの。
だって、容疑者を検挙する時には警察ですら権利を読み上げるだろう。

冗談はさておき。

おりしも今年もメーデーが近づいてきた。数年前からメーデーは政治的イデオロギーばかりをスローガンにする、などと労組を批判するネット記事を目にすることが何度かある。私もその批判に対し、辛辣な批判を返したものだが、ある意味、今の「連合」を中心としたお手盛り御用労組の運動が決して褒められるものでは無いこともまた事実。

企業内労組の限界は、当該の企業にさして大きな争議が持ち上がらない場合、すべからく御用組合化していくという欠点があるように感じます。地域独立ユニオンが広まることで「正社員クラブ」などと揶揄されず本当の意味での労働問題に取り組むことでブラック企業なども淘汰されていくものだと考えますが、どうでしょうか。

 

以下に労働組合法第7条を引用します。

 

第7条  
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
  1. 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
  2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
  3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
  4. 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

 

 

 

生産性が低いのは企業が労働者を使い捨てにするという側面も大きいんじゃねえの

 

www.tokyo-np.co.jp

 有期雇用で働く人が、無期雇用への転換を求めることができる「無期転換ルール」が四月から本格的に始まるのを前に、企業から契約を打ち切られる「雇い止め」が多発している。労働組合などに突然職を失った人たちからの相談が相次いでおり、問題は深刻化している。 (木谷孝洋)

 「年末に突然、『次は更新しない』と言われた」

 「十二年間働いたのに、能力不足を理由に雇い止めになった」

 有期契約や派遣で働く人たちが加入する全国ユニオン(本部・東京)には昨年九~十二月、雇い止めに関する相談が三十二件寄せられ、前年同期の三倍に達した。連合にも昨年十二月、前年同期より十件近く多い百一件の相談があった。厚生労働省の調査でも増加しており、担当者は「四月に向け、さらに増える可能性がある」と話す。

 背景にある無期転換ルールは、有期雇用の労働者が通算五年を超えて契約を結ぶと、雇い主に無期雇用への転換を申し込める制度。企業側は拒否できない。雇用の安定化を目的に、二〇一二年に成立した改正労働契約法に盛り込まれた。

裁量労働制適用拡大や高プロも大問題だけど、非正規雇用者にとってはこちらも切実な問題です。

上記のように、この4月から有期雇用契約を無期へ転換することを求めることができるようになるわけですが、その改正労働契約法が施行される4月を前に契約を打ち切る「雇止め」が企業で横行しているそうです。

私の知人も某大手流通店舗に、派遣の形で6年以上勤めているのですが、この3月をもって契約打ち切りを宣告されたそうです。
派遣元の当初の言い分では、売り上げが芳しくないので、と当該店舗からの撤退を視野にという話をしていたそうですが、実は今後も店舗は存続するし、新規で派遣をも雇い入れることが判明したそうです。

企業の労務管理の方策として二つがありますが、経験も積み業務にも慣れた人材を解雇するのと、新たな人材を雇うリスクはどちらが大きいのかということです。後者の方がリスクが高いはずだと、私などは思うのですが企業のメンタリティは一介の労働者である当方には及びもつかないほどの、深淵なるものなのでしょうかね。

 

「低すぎる最低賃金」が日本の諸悪の根源だ | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

コストコの時給1500円に群がる人々を見れば一目瞭然でしょ。

2018/03/02 10:41

この記事は、日本国内の最低賃金の低さが、OECD加盟国の中で20位という労働生産性の低さとの相関性があると言っていて、私も大きく賛同しますが、もう一つ。こうして経験豊富な労働者を使い捨にする、こういうやり方にも大きな原因があるような気がして仕方がない。


ご存知のように、企業の通常メソッド以外に日常の仕事では手順や優先順位、それこそ本当の意味での個人の「裁量」で段取りを決めて、業務を遂行するという場面が多くなってきます。それと現場レベルでの慣れ、という面もないとは言えませんよね。

 無期雇用にして何が問題なのだろうか。
さらに、クーリングオフといって6か月間の契約空白を設ければそのルールが適用されない、という抜け道を使ってまで雇止めをする姑息さは理解不能ですわな。
有期雇用が期間の定めがない雇用になるというだけではないのかなあ、分からない。


結局のところ、企業側とすれば雇用の調整弁としていつまでもフリーハンドの姿勢を保っていたい、ということでしかないのでしょう。

 

労働者が不利益被る裁量労働という働かせ方

twitter.com

私も上記のようにツイートしましたが、厚労省が提出したデータが誘導というか恣意的な設問で作成されていたようですが、ゴミウリや3Kといった政権御用マスコミが誘導する世論調査の質問みたいなものですね。それでも厚顔を画に描いたような安倍首相は答弁を撤回しただけで、官僚が提出したものを信じるしかないわけで、ボクは悪くないもんね、と居直っているようです。

 

コトバンクには次のように記載してあります。

裁量労働制(さいりょうろうどうせい)とは - コトバンク

実際に働いた時間でなく、あらかじめ決められた労働時間に基づいて残業代込みの賃金を払う制度。それ以上働いても追加の残業代は出ない。仕事の進め方や時間配分をある程度自分で決められる働き手に限って適用できる。研究開発職など専門性の高い仕事か、企業の中枢で企画・立案などの仕事に就く人が対象。

 「仕事の進め方や時間配分をある程度自分で決められる働き手に限って適用できる。」

 
「ある程度」という点がミソなんでしょうか。例えば生産現場で働く仕事ならば、何時から何時までという労務管理は容易ですが、研究や開発、編集、営業などという職種は時間管理が困難なうえ、成果が時間で推し量れないという難問が横たわっています。
しかし「今日はここまで」と就業時間を自分で自由に裁量を持って決められる労働者が、経営者以外何処にいるのかしらん。


おそらく企業側は「成果は出ないくせに、時間ばかりかかって残業代は膨らむ一方だし」という被害者意識の発露から、裁量労働制の拡大を目論んだのは明白です。それは第一次安倍内閣の時に「ホワイトカラーエグゼンプション」を計画し、とん挫した過去があるわけで、今回の「働かせ方改悪」はそのリベンジの如くこうして何度も何度も、手を変え名を変え法案を提出してくるわけで安倍晋三が言ってた「再チャレンジできる社会」には合致しているのですが、国民にとって迷惑極まりない。

 

裁量労働制の概要 |厚生労働省厚労省ホームページ)

今のところ適用業種は専門型が19業種と企画業務型となっています。

 

「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」という記述の、すでに空文化している労基法6条は削除しろよ、と思うのですが、ご記憶の向きもあろうかと思います。労働者派遣法が初めて制定された1986年当時、ポジティブリスト(この業種だけが派遣を受け入れられる)13業種だったものが その後改正され26業種に拡大。
挙句には1999年にはネガティブリスト(この業種だけが派遣禁止)7業種と、どんどんなし崩し拡大の一方。

 

このように派遣法が適用範囲を広げ、いまに至る非正規・正規の格差拡大や雇止めの問題を引き起こしている訳です。今回の裁量労働制がこのプロセスを踏まない、とだれが約束してくれるのでしょうか。
しかもこの裁量労働制は「定額働かせ放題」と揶揄されるように、みなし残業代を含んでおけば時間管理が容易ではない業種もサービス残業させ放題、となり得ます。なんと言っても、出退勤務時間のカード等を備えている事業所ばかりではないでしょうし。

さらに昨日にはとんでもないデータが厚労省の地下倉庫から出てきたと大騒ぎです。

https://mainichi.jp/articles/20180222/k00/00m/040/132000c

また、これまで厚労省が「ない」と説明していたデータの基となる調査票が、20日に厚労省本庁舎の地下倉庫から見つかったことも判明。野党の指摘を受けて調べたところ発見されたといい、問題発覚後の調査の甘さが浮かんだ。

(中略)

1週間の残業が「25時間30分」だったが、1カ月の残業は「10時間」だった

こんな加減乗除も無茶苦茶なデータを前提に作成した答弁をしておきながら法案の撤回をしないという、初めから結論ありき。
しかし、「ない」としていた書類が地下倉庫に「ありました」というオチは厚労省職員の内部告発なんでしょうか。
公益通報者保護法を適用して、守ってやってほしいもの(笑)

 

結局のところ、自民党政権はいつの時代であろうが、企業・財界向けの政策をすることで自らの政権の浮揚、延命を図ることしか存在理由はないのでしょうな。

 

 

「三菱自動車 燃費不正」会社側の責に帰する休業のツケを払わせられる労働者

 

三菱自の下請け、自宅待機の社員も 燃費偽装の影響拡大:朝日新聞デジタル

 水島製作所では2日、大型連休とあって生産ラインが全体的に止まり、人の出入りはまばらだった。大型連休が明けても軽の生産は当面できないため、担当していた約1300人が自宅待機を命じられている。

 賃金削減と補償については会社と労働組合が交渉を始めているが、ある男性社員(23)は「賃金のことは情報が入ってこない。なるようにしかならないですね」と漏らす。


三菱自動車の燃費データ不正問題で岡山の水島工場が稼働停止になっていて、会社側から従業員に対して賃金カットの要請が労組側に提示される方向だそうだ。当然こういった事態は地域経済にも暗い影を落とす訳で、いかに「会社ぐるみだ」と指弾されても、実際の不正を働いたわけでもなく、それこそ毎日毎日数分単位で流れてくるライン上の車に、数々の部品を自らの肉体を駆使し取り付けたり、或いはロボット使ってオペレーションしている労働者にしわ寄せが行くのには憤りを感じる。そこへ、親会社でもある三菱重工の相談役の御仁が身内をかばうだけの保身にまみれた発言を週刊誌紙上でおこない、火に油の状態となっている。

 

lite-ra.com

(抜粋引用)

冒頭の「公表燃費性能はコマーシャル」発言だけではない。「買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ。商売する人は別だけれど、自動車に乗る人はそんなにガソリンは気にしてない」「実際に(対象車種に)乗っとる人は、そんなに騒いでないと思うんだけどね」「(従業員は)罪悪感は全くなく“まあ良さげにしとけ”ということでやったに違いない」「僕が社長だったらね、“ああ、これは愛社精神の指導が間違ったんだな”と社内的には善意なんだろう、と」など、インタビューで暴言を連発している。

 

自動車に乗る人はそんなにガソリンは気にしてない

身内を擁護するつもりかなにか知らないが、自分たちに向けられている厳しい視線にも全く無頓着ではないのだろうか。リッターあたり、数円の違いでセルフのガソリンスタンドを選んでいる人間にとって、さすが大企業の偉いさんはお金持だけに言うことが違うな、と感心しきり。そしてなにより、新車の購入時に燃費に応じて自動車重量税地方税自動車取得税が軽減されるエコカー減税などにも絡んでくるとすれば、本来支払うべき税金の補てんなどを求められるとすれば企業の存続にもかかわってくる。


それを、言うに事欠いて『まあ、よさげにしとけ』なんていう能天気極まりないグループ企業トップの態度を見るにつけ従業員は憤懣やるかたないだろうな、と門外漢の私にも想像に難くない。

 

三菱自動車“不正”車生産の従業員 賃金カットへ

不正をしたのは生産ラインで働く従業員ではない。そしてこれを了とするのが御用組合たる所以でしょ。/まあ、休業補償は6割を支払う義務があるが、今の段階で従業員の副業も認めたのか?それを是認するのは暴論。

2016/05/02 18:29

 

 会社側原因の操業停止で賃金カットの憂き目にあう方はたまったもんじゃない。この報道が先行したのかもしれないが、ニュースを受けとる側としては一方的な印象を抱いてしまう。まず最初に経営陣が自らの報酬カット、管理職などの減給などを発表し、資産の売却等、手を尽くしたあと万やむを得なく工場の生産ライン従事者の賃金カットを発表するとすれば、ここまで批判は集中しなかったかもしれないと思う。休業補償は労基法で、休業が使用者の責に帰する場合は6割以上の賃金の保証をしなければいけないとあるが、それを労組がどこまで粘り強く交渉できるかが問題だと思う。

 

 はてなのブックマークコメント(ブコメ)でも、おおむね労働者に同情的なコメントが並んでいるようだ。けれども中には『自宅待機で休業補償もあるし、副業もできるのだろう』だとか、或いは『働いてないんだから当たり前じゃね?』などというコメントを「それは酷かないか?」と感じたのでブコメに追記をした。仮に2~3割も賃金が減額されると、自宅のローンを抱えている人や子どもが進学時期だったりする人などは途方に暮れているのではないか。

 

従業員の副業は一般的に会社の就業規則では禁止されている。その規定を一時的に解禁するという報道もなされていない今の段階で、それは少しどうなのかと思う。副業OKになったとしても1300名からの人のアルバイトが、そんなにすぐに、都合よく見つかる保証はどこにもない。もっと言えば、生産ラインでインパクトを回してて、例えば飲食店などの客商売に向いている人は、そんなに多くはないだろう。

 

ネットではこのほか、雇用を守るための措置であり仕方がない、などというまとめサイトもあった。

togetter.com

 

しょせん他人ごとだから「雇用を守るため」などと、何故だか経営者然として高い目線で「テメエ、何者だ」みたいな人も出てくる。なに言ってんだかと言うしかない。災害や大きな事故での休業と違い、意図した不正が原因のこの休業は、いつまでの自宅待機なのか、まったく先が見通せない。そして、その先には従業員のリストラや解雇につながっていくのは火を見るより明らかだろう。かつて、同じく三菱自動車リコール隠し問題で揺れに揺れた2000年前後、名古屋の大江工場が2001年には閉鎖になっている。(それを思うと、企業として全く学習していない)
それでも偉そうに「自宅待機は雇用を守るためだ」などと言えるのだろうか。

 

私は2015年3月のはてなブログ

ネットで読んだ「自動車工場の期間工」という記事に思い出すあれこれ - 諸般の事情はどうですか

という、つまらない記事を書いたのだが、実はこの三菱の水島工場に派遣労働者として2年弱であったが働いた経験がある。当時は軽四のラインでミニカやパジェロミニを製造していて、たしか「商1組ライン」そして「商2組ライン」はデリカなどを製造していたと記憶している(遠い記憶で呼称は定かではない)。私はランサーやミラージュなど、乗用車の「乗1組ライン」のほうだったが、軽四の車体が流れてくるラインは速くて大変だ、と同僚が言っていたように思う。その当時のあのひとたちは、みんな辞めていないだろうなとは思うが、派遣労働者として辛い思いばかりをした、決していい思い出の職場ではなかったが、そんなシンパシーを感じてしかたがない。

非正規雇用の独身の孤独と絶望

35歳~54歳の子どものいない独身女性が困窮と孤独に苛まされているという朝日の記事を引用します。

 

非正規・独身…孤立し困窮する女性たち、切実な実態調査:朝日新聞デジタル

非正規で働く、子どものいない35~54歳の独身女性が、困窮し孤立している実態が、公益財団法人「横浜市男女共同参加推進協会」などの調査でわかった。「病気になったら生活が破綻(はたん)する」「1人で老後まで生活できるか不安」。さまざまな支援策からも漏れ、寄せられた声は切実だ。

現在の年収は「150万円以上250万円未満」が4割。「150万円未満」の人が3割で、年齢が上がるほど比率が高かった。

 現職の契約期間は1年未満が4割余。3割が仕事を掛け持ちしていた。非正規職に就いている理由は「正社員として働ける会社がなかった」が6割を超えた。

 「親の介護で貯金を使い果たした」(54歳)「いつまで働けるかわからず、元気なうちに死にたい」(42歳)など、収入や雇用継続への不安が多く聞かれた。

 仕事につながるスキルアップのほか、「孤独」「居場所がない」として、同じ立場の人との交流や相談の場を求める声もあった。

 

ここ2本ほど続いたエントリーに関するけれども、非正規雇用の中年女性層もやはり「正規の雇用がない」という理由が6割を超えます。
「いつまで働けるかわからず、元気なうちに死にたい」(42歳)との壮絶な孤独感と果てしない絶望にはかける言葉を失う。
アンケートでは、老後の心配や仕事の悩みなどがそれぞれ8割を超え、そのほかに親の介護など、独り身の女性の肩にその多くがかかってきて。
ただ、正規雇用になったとしてもすべての問題が解決されるわけではないことも当然ですが。

 

この記事に関するブックマークコメントが考えさせられました。

 

そして忘れさられる恵まれないおっさん達。/これは自由と自立の代償なのか?

身につまされる。すぐそこにある現実。とはいえこれを避けるために男という意味不明な生き物と暮らすのはごめんだ。 

 

非正規の独身男性にも同じような不安や悩みがあるのは明白で、上のコメント主は男性だろうし。
下段のコメント主はおそらく女性であろうか、けれどもだからといって男性と暮らすという選択肢はまっぴらだ、という意思が感じられます。

 

私も独身時代に親がうるさく言うもんだから婚活サービスに登録したことがあった。当時で40万弱の会費を支払った。しかもそのサービスでは結婚にたどり着けなかったし。つまりドブ銭だったわけ。
金を支払ってまで婚活をするという男女がどれくらいいるのか分からないが、雇用のミスマッチと共に結婚のミスマッチかもしれない。

 

自由と自立の代償なのか?というコメにあるけれど。
自由と孤独はふたつでセットという歌詞があったかのように記憶していますが『ひとり口は食えずともふたり口なら食える』という古い言い回しだけでは片付かない切実な問題が横たわっていて。
でも、そうしたこともまた現実として言えるのも確かかな、とも思うけど。オッサンとしては。

 

 安倍政権が1億総活躍などとお題目さえ唱えれば、私の責任は果たした、なんていう言いっ放しの政治に放置されるのはこうした暗澹たる現実でしょう。

 

 

 

                    

「正規の仕事がない」との理由が減少した原因?

前エントリーが久しぶりに多くのブクマを頂き、恐悦至極でございまして。
コメントも頂いたのでそれに関してのエントリーを書こうと思います。

■id:takonohamajp

データの扱い方がどちらも恣意的すぎる?
【男性では「正規の職員・従業員の仕事がないから」が前年同期に比べ9万人減少】労働力調査(詳細集計) 平成27年(2015年)10~12月期平均(速報)結果

■id:wrr

確かにデータの扱い方がちょっとだめですね。正社員自体は人口構造の歪みから減ってくので正規雇用比率でみるといいです。安倍政権以降生産年齢人口での正規雇用比率は高まってます。非正規雇用が増えたのも主に就職弱者、特に高齢者が働けるようになったからで円高時の就業率の低下と円安時の就業率の上昇、世代別で見れば65歳以上だけが非正規比率が高まってますね、ほかは低下に転じてます。

 

お二方コメントありがとうございます。
takonohamajpさん、前年同期に比べて減少したという点は評価しなければいけません。しかし、wrrさんのコメントにも関係するのですが、その減少に転じた原因がどこにあるのかというものです。「改正高齢者雇用安定法」だとか企業の定年延長再雇用制度などが俎上に上がってくるのかもしれません。

 

というのも、高齢者や定年延長による再雇用などの非正規雇用者は正社員だったか、あるいは初めから正規雇用を求めない傾向にあるものと思われます。wrrさんが言及されていますように、65歳以上の非正規率が高まっていることを踏まえると、そういう制度が「正規の仕事がないから」という理由の減少である可能性が高いと思いますが。
そのことに関した『東洋経済オンライン』の記事を見つけましたので以下引用します。

非正規雇用比率「4割大台乗せ」の正しい見方 | 就職・転職 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

ポジティブな非正規雇用が増えている

つまり、4年前と比較して「非正規」の割合が増加したことは確かだが、追いつめられた労働者がやむを得ず、というステレオタイプな「非正規」のイメージとは異なり、法によって企業に義務づけられた制度により、労働者にとってポジティブな「非正規」雇用が増加している可能性が高い。

「改正高年齢者雇用安定法が、非正規割合を押し上げた一つの原因と言えることは確かだ。昨今の景気の回復によって、65歳以上の就業割合は上昇傾向にあることを示している。メディアでは少し歪められた形で報道されているのではないか」(厚生労働省雇用・賃金福祉統計課 山口美春氏)

 

このグラフを見ると、25~54歳男性では、やはり圧倒的に「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由がダントツです。この記事の後半部分を少し引用します。

高年齢者雇用安定法も、結局もともと正社員だった人だけが恩恵を受けられる仕組み。順調に正社員を続けてきた人と、レールから外れてしまい従来から非正社員だった人との間で、「非正規」の枠の中でも、格差が生じる状態になってきているということが、本質的な問題なのではないだろうか。

 

順調に正社員を定年まで勤め上げた高齢者と、これから、という25歳~54歳の働き盛りの男性が「正規の仕事がないから」というのとでは雲泥の差があると感じますが。なにしろ「2014年1年間に非正規労働者に支払われた給与総額は正社員の12%にとどまる。(日経新聞の社説より)」という給与の格差が厳然としてありますから。
正社員だった人が定年を迎え再雇用となった場合には正規従業員としての雇用は求めないだろう、というのが概ね正しいのではないでしょうか。

 

長谷川幸洋氏だけじゃなく、この雇用統計は総務省厚労省そのものが恣意的な数字を出しているなあ、と感じた事です。そもそも非正規雇用の男女の数字を合計していること自体が変だなと思ったからです。
家計の助けになるから、夫の配偶者控除を受けながら103万の壁でパートとして働く非正規雇用女性と家計の大半を稼ごうとする非正規雇用男性の問題点は大きく違うと思うわけです。

 

 

ところで記事とは関係ないけど。
エクセルなどのデータをはてなブログに張り付けられるんですかね。
前エントリーを書いている時、無知なものでデータをプリントアウトして、それをスキャンして画像として取り込んだりしましてね(苦笑)ですからグラフの色が微妙な感じでしょw